目次
「モダンダンスって、ちょっとカジュアルにしたバレエでしょ?」
「モダンダンスとコンテンポラリーダンスって一緒じゃないの?色々あるコンテの中の一つがモダンか、色々あるモダンの中の一つがコンテみたいな。」
「なんか違うらしいのは知ってるけど、よくは分からない。聞かれるといつも上手く答えられない。。。何が違うの?」
ダンスをされている方でも、このように思われている方が多いのではないでしょうか?これらはモダン・コンテンポラリーダンスの疑問あるあるだと思います。
モダンダンスやコンテンポラリーダンスをされてる方は日本にも多いと思うのですが、モダンダンスやコンテンポラリーダンスが好き、というよりは、「その先生やカンパニーの踊りやクラスが好きだから受けている/所属している。」という感覚に近いのではないでしょうか?
ちなみに以前の私は、まっっっっっっっっったくもって分かってなかったです。
日本にいる時の、まだコンテンポラリーダンスをしていなかった当時の私の概念は、
モダンダンス=バレエ基礎で結構しっかり踊る。つまりJazzダンス。
コンテンポラリーダンス=あんまり踊らない、動かない謎系。コンテっていうかコントじゃない?
という、今コンテンポラリーダンス作品を作っている者としてあるまじき考えをしておりました。
(大人から始めた私にまで届くような、正しい知識や情報元なんて無かったんです!申し訳ありません!でもだから今広めようとがんばってるので許して下さい!)
本日から数回に分けて、「モダンダンスとは」「コンテンポラリーダンスとは」についての記事を書いていきますので、これですっきりはっきりさせましょう☆
本日は導入として、
・疑問あるあるへの回答
・ざっくりとしたそれぞれの定義/全体像
・そもそもの知る意義や必要性
をお話させて頂き、次回以降でそれぞれについて詳しくお話させて頂こうと思っています☆
疑問あるあるへの回答
Q.「モダンダンスって、ちょっとカジュアルにしたバレエでしょ?」
⇒バレエに反発して生まれた、当時それまでになかった革新的な新しいダンスなので、バレエではありません。
当時は今のようにたくさんのダンススタイルはなく、「ダンス=バレエ」でした。なのでモダンダンスを始めた人たちの多くはバレエを学んできた人や、バレエダンサーがモダンダンスに魅了されて受け継ぎました。
なので、バレエに似た動きがあります。ストリートダンスとは全く違う派生なのでストリートダンスっぽさは全くなく、現代においてストリートダンスと比べたらバレエと思われるのも無理はないかもしれません。
ちなみにジャズダンスとはルーツが全く違います。ジャズダンスのルーツはアフリカン民族舞踊なので、もっとシャープかつリズムや音楽を重視して踊られます。
参照:
Q.「モダンダンスって、コンテンポラリーダンスと一緒じゃないの?」
⇒モダンダンスが ”バレエNO!” と言って生まれたのに対し、コンテンポラリーダンスの始まりは ”バレエYES!” ”モダンYES!” と、両方を取り入れた更に新しいダンスでした。なのでそれぞれに似ているところはあれど、純粋なバレエや純粋なモダンとは違います。
しかしそれぞれをどれ位取り入れるかは、作り手の経験や好みによって大いに左右されます。なので作り手や作品によれば、”ほぼバレエやん!”とか、”ほぼモダンやん!”とか、最近だと”ほぼヒップホップやん!”などがあるのだと言えます。
(”コンテンポラリーダンス”という名前の使い方が無法地帯になってしまっている気も否めませんが、、、コンテンポラリーダンス界の問題はまた今後記事にしたいと思います!)

Q.「コンテンポラリーダンスと違うらしいのは知ってるけど、よくは分からない。なんとなくは分かるけど、説明までは出来ない。。。何が違うの?」
⇒詳しくは次回以降で述べますが、それぞれの特徴をあげるとこうなります。
<モダンダンス>
・制約の多いかたっくるしいバレエに反発して生まれたもの。⇒バレエの反対=脚技よりも上半身重視、はだし、おろした髪の毛、流れるような衣装、
・バレエからの自由、女性解放の自由など、自由を求めたダンス。
・コンテンポラリーダンスより古い。
・人間の内面、感情表現重視。ドラマチック。(初期~中期。後期以降になると、次第に抽象的になってくる⇒コンテにつながる)
・パフォーマンスとしての人気は、当初に比べて減ってきている。
・しかし確立されたテクニックやメソッドがそれぞれにあり、大手の学校もあるし、現在も”テクニック”としては世界中で高需要。
<コンテンポラリーダンス>
・バレエとモダンを取り入れて生まれた。
・テクニック・メソッド化された何か(バレエやモダンなど)に、新しい何か(フロアワークやコンタクトインプロや演劇やヒップホップなどなど)を入れて、それぞれの創始者がしなかったことをする。
・しかし次第に無法地帯化。なんかよく分からないもの全部コンテって言っちゃえ的な風潮
・ドラマチックではない。=動きと感情が分かりやすくは繋がっていない。=抽象的。
・そもそも感情とかないものもあり。
・一つのテクニックだけでは踊りこなせない。
・テクニック化、メソッド化されていない。
・現在進行形。
モダン・コンテンポラリーダンスの定義
<モダンダンスとは>
19世紀末~20世紀中頃にバレエに反発して自由を求めて生まれ、当時からしたら革新的だった、自分の内面を表すダンス全般を指す。特徴は振付家により異なるが、バレエとは違い裸足、上半身重視など。現在ではもう新しくはなくなったがそれぞれの確立されたメソッドにより今でも人気。西欧では、コンテンポラリーダンスをするなら必須とされているダンス。
現在世界では、「ダンス上達の為のテクニック取得、メソッドダンス」と捉えられる事が多い。
<コンテンポラリーダンスとは>
元々は更なる表現方法を求めてバレエとモダンの両方を取り入れてみた、20世紀中頃以降に出来た抽象的なダンス(感情表現重視ではない)全般。モダンダンスと同じく踊りの特徴は振付家により異なるが、何かのメソッドに何か新しいフレーバーを取り入れたものがコンテンポラリーダンスと言える。
それ自体に確立されたメソッドがあることは少ないが、様々なスタイルが取り入れられているため、複数のテクニックに精通していることが求められる、本来なら高度であるはずのダンス。
しかし何でもアリとも取れる使い勝手の良い名前のため、無法地帯化している側面も大いにあるダンス。
踊りの特徴は、予期しない動き、フロアワークやインプロ(即興)多め。
(一概には言えません。振付家によって本当に様々です。)
よって、モダン・コンテンポラリーダンスとは、踊りの特徴に対してつけられた名前ではなく、考え方や取り組み方に対してつけられた名前であります。
知る事の意義。知ってるともっと上手くなる!おもしろくなる!
私は「アートを楽しむのに知識なんて要らない!」と思っており、それについては過去の記事にて述べさせて頂いてきました。
・抽象的近代・現代アートの楽しみ方 ~一人突っ込み漫才~ 知識なんていらない!
(でも知ってると面白さ倍増しますよ、という事で⇩2つ)
・超簡単アート史・西洋美術史 前半 〜ほぼ神の事or写真代わり〜
・超簡単アート史・西洋美術史 後半 ~オリジナル探求し過ぎて便器まで出てきた近代・現代アート~
しかしそれはあくまで、”観る側として”、です。
私自身がダンサーであること。またアートはアートでも、絵画や彫刻などに比べてダンスの需要は低く、ダンサーがダンサーとしてお金を稼げない現実があり、その理由はダンサー自身のダンス教育における質の低さにも起因しているというのが私の見解です。なので、ほんの少しだけ掘り下げてお話させて頂きたく思います。以下全て、「もっと早くから知っていれば良かったのになぁ!」という私の経験談からです。
<知ってるともっと上手くなるし、観るのももっと楽しくなる>
別に知識なんて無くても、中には天才的に上手い人はいますし、ある程度までなら皆そこそこ上手くなることは出来るでしょう。しかしそのダンスへの知識があると、それはもう飛躍的に伸びます。
また、観る側としてもシンプルに動きを楽しむ事も出来ますが、基礎的な知識があると、鑑賞における楽しみも増します。(サッカーやアメフト観戦ならルールを知らなくても、大の大人たちがたった1つのボールを必死に追いかけている姿に興奮出来るし楽しめますが、やっぱり知っている方が断然おもしろいですよね!?)
例えばバレエだと元は宮廷内での宮廷貴族ダンス。だから所作や衣装や振る舞いに、ひじょーーーーーに品があるのです。「私は高貴な貴族よ。」と思って踊るのと、「ワテ生まれも育ちもコテコテの大阪民ですねん。(私)」って思いながら踊るのでは、明らかに踊り方に差が出ますよね。笑 後者では、あの貴族らしいとってもお上品な振る舞いは出来ないでしょう。(ごめんなさい大阪)

もう一つ例を挙げると、ロックダンス。始まりは、パフォーマンス中に次のフリを忘れたDan Campbelがごまかす為にお客さんの事を指さして、観客の注目を彼女に集めた事からです。”ポイント”というロックダンスの代表的な動きには、「ヘイ!そこの君!」という意味があったんです。その後も、「次はお前の番だぜ!」のように、ちゃんとコミュニケーションの意思を伴った動きでした。このことを知って、明確な意思をもって何か/誰かにポイントするのと、あちこちに無意味にランダムにポイントするのでは見え方が変わってきますよね。

私はこれらを知ってから、ぐっと成長したのを実感しました。
それと一緒で、今皆さんがされているダンスの事、振付師、創始者、さらにその人の師匠、歴史、ルートを知る事は、一つ一つの動きにより深みをもたらします。「なぜこれをするのか。」「このエクササイズは何の為なのか。」が分かれば、そのダンスの習得にも拍車がかかります。
例)
「○○先生は元々は*ホートン出身プラス、ヒップホップ好きな先生だから、作品は力強くダイナミックでテクニックすごいけど、且つリズムや*アイソレーション多めでより複雑、今時な感じでもあるんだな。
ってことは、この先生の作品を上手く踊りたかったら、ホートンとヒップホップの技術もつけなきゃ!あ!そういえば先生のクラスではホートンっぽいウォーミングアップあるかも!いまいちよく分からないままいつもやってたけど、これからは理解してしっかりそのウォーミングアップやろう!」
*ホートン:モダンダンスの一種。特有の力強い動きがある。強靭な身体。
*アイソレーション:身体のそれぞれのパートを別々に動かす事。
ここで、ホートンやアイソレーションが何かを知っていなければ、このような今後の考え・計画・作戦にさえ至る事は無く、成長の伸びしろは知っている場合と比べて非常に少ないでしょう。
また、「何でこのダンスを作ったのか」を理解すれば、作品に対する姿勢も明確かつ作り手の意図に沿ったものになり、単なる上辺の動きや顔だけマネして理解した風ではなく、もっと深い所で繋がる事でしょう。
⇒目的/ゴールを知った上で練習するのと、知らずに言われたままの事をただただやるのでは習得度合いに差が出てくるのは何でも同じです。
例)私が実際にNYで見たもの。
とあるダンサー「(心の声:感情表現しなきゃ!)先生!このシーンはどういう気持ちで踊れば良いですか?頑張って考えてみたんですけど分かりません。。」
振付師「ん?俺の作品には感情なんて何もないぞ。それより俺は流れる自然な動き自体に美を感じているんだ。無駄な装飾をするのはそれを妨げるから止めろ。」
この先生の作品を上手く踊る為には感情表現の練習なんてせずに、ただただナチュラルな動きに磨きをかける練習に集中すれば良いのです。作り手の事、意図やルートを知らないと彼らの意に沿った踊りが出来ないし、無駄な時間を取られるし、振付家からの評価も下がってしまいます。
なのでダンサーとして、特にモダンやコンテンポラリーダンスをしているのならば、ダンスの歴史について知る事は非常に大切です。
まとめ
以上、モダンとコンテンポラリーダンスはそのルーツから一見似ている事もありますが、取り組み方や時代が違います。現在はコンテンポラリーダンスの方が人気になってきていますが、コンテンポラリーダンスをするならばモダンダンスのテクニックの習得は世界レベルだと必須レベルで重要視されています。
知ってると、上手くなるし楽しみ方も増えます!特にダンサーなら、知っておきましょう!
モダンダンスとコンテンポラリーダンスシリーズは全4回です。
予告:
- モダンダンスとコンテンポラリーダンス② ~モダンダンスとは~ 日本語初・主要ダンスまとめwith動画。
モダンダンスとコンテンポラリーダンス③ ~ポストモダンとは~ ダンサーっぽいのナシで
モダンダンスとコンテンポラリーダンス④ ~コンテンポラリーダンスとは~
なので、ぜひぜひ次回以降の記事も読んで頂きたいなと思います☆
この二つのジャンルは線引きが曖昧で、まだ例を全然出していないのでよく分からないかもしれませんが、次回以降で例をあげながら紹介させてもらうつもりです☆ですので今日はなんとな~く、全体像だけぼんやりと入れておいて頂けたらと思います!
ちなみに私のお気に入りモダン・ダンスは、ホートンです。すごく身体が強くなりますよ!
ありがとうございました☆
良い一日をお過ごしください☆
Have a good one!
Aika.